スポーツに親しむ仕組みを作る

2007年5月号「e-resident」掲載~山中湖、所属するバスケットボールチームの春季合宿

―バスケットボール再開

先日、私が所属するバスケットボールチームの春季合宿があり参加してきました。合宿は山中湖の近くの体育館で行われ、土曜日の午後と日曜日の午前、それぞれ3時間まじめに練習。

学生時代は麻雀とバスケットと勉強??に明け暮れた私ですが、さすがに医者になってからは忙しくてバスケットに打ち込む余裕もなく、そのような機会もありませんでした。しかし、15年ほど前、週1回企業の医務室にアルバイトに行っていたのですが、その企業のバスケットチームに入れてもらい、時々練習したり区民大会に参加したりしていました。ただそれも、ほとんど練習にも出られず、また最近は、若い人たちと一緒だとだんだんついてゆけなくなり、サボりがちでした。

今年に入り、「40歳以上が参加するバスケット大会があるのでチームに入らないか」とのお誘いを受け、新しいチームに入れていただき、再びバスケットを一生懸命やり始めました。土日を含め月に5日ほどの練習に励んでいます。

私が再びバスケットに打ち込めるようになった理由を分析してみると以下のようになると思います。

1)    バスケットをするのが楽しい

しばらくあまり練習していなかったせいもあり、まじめに練習していると、「うまくなっている」と実感できる。試合もあるので、「チームの一員として一緒に戦っている」と実感できる。「試合に勝つ」という目標がある。いつも接しているオリンピック選手とまではいかなくても、せめて、「裸になってもはずかしくないからだになろう」という目標もある。

2)    バスケット以外も楽しい

私のチームはいろいろな職種の人たちの集まりです。当然、練習のあとは居酒屋で一杯ということになるのですが、それが楽しい。チームのみんながとてもフレンドリー。

3)    バスケットをしようと思う「時間と心の余裕」ができた

大学病院時代に比べ、時間の余裕は同程度の忙しさですが、ある程度自分でコントロールできるようになりました。そして、何より、心の余裕ができました。

4)    音頭とりをしてくれる人に感謝

ひとりではバスケットはできません。仲間を集めたり、練習場所を確保したり、バスケット以外の楽しみも企画したり、と音頭を取ってくれる人が必要です。私のチームでも、みんながそれぞれ役割を分担して、「バスケットを楽しくできる環境」を作ってくれています。感謝、感謝。

すなわち、私が現在バスケットに打ち込めるのは、「バスケットを楽しくできる環境、仕組みが出来上がっている」からなのです。スポーツにはルールがあって仲間がいてその中で自分自身を高めるという、文化的な要素を持っています。これは、スポーツに親しむ上でとても重要な要素だと感じます。

―スポーツに親しめる環境とは

以前から、生活習慣病の予防に適度な運動が大事であることが叫ばれてきました。最近は「メタボリックシンドローム」なる言葉も大はやりです。私自身も、消化器内科医時代に脂肪肝の患者さんに、「もっと運動したほうがいいですねえ」なんてよく言っていました。

みんな、「運動したほうがいい」なんてことはわかっているのです。でもできない。じゃあ、なぜできないのか、それを考えて、みんながスポーツに親しめる仕組みを作らなきゃあいけない。子供のころからスポーツに親しむ仕組み、仕事や家庭が忙しい30代、40代でもスポーツができる環境づくり、「心の余裕」ができる社会、そういった「社会の仕組み作り」が大事だと思います。それらは、「医学」ではない、という人もいるかもしれないけれど、「みんなが健康でいられる」ということが医学の最終目標であるのなら、「仕組みを作る」ことに全く無関心ではいられないはずです。

最近話題の、「医療崩壊」「お産ができる病院がどんどんなくなってゆく」「つかれきった勤務医がどんどん辞めてゆく」なんて問題も、まさしく、「医療の仕組み」に問題があるのだと思うし、そのような「医療の仕組み」を考えたり立て直したりする事が、インパクトファクターの高い雑誌に論文が載ること以上に評価されてもいいのになあ。

トップアスリートにかかわっている私も、日本の競技スポーツが強くなることによって、みんながスポーツを身近に感じてスポーツに親しめるようになる、と信じてがんばっています。「スポーツに親しむ仕組みを作る」ためにも、まだまだやらなきゃいけない事がいっぱいあります。そのうちどんどん忙しくなって、また、自分がバスケットに親しむ余裕もなくなっちゃうのかもしれないけど、まあいいか。