無伴奏のチーズケーキ

チーズケーキの話を続けます

私が生まれて初めてチーズケーキを食べたのは、大学1年生の時、松本駅前の「無伴奏」という喫茶店でした。

バロックの流れる中、いれたてのフレンチコーヒー、とびきりうまいチーズケーキ、大学に入ったばかりの私は、そこにいるとなんだか大人になった気分がして、毎日のように入り浸りました

うれない物書きや役者、安曇野の自然の中で絵や詩を書いている人、いろいろな大人たちがやってきました。マスターは無口だったけれどいつも笑っていた。ママさんは店の中で版画を飾って売ってた。私も忙しい時はウエイターとして手伝っていた時期もありました。

でも、あのとびきりうまいチーズケーキもう食べられない。マスターはなくなって店もなくなっちゃいました。さびしいけれどしょうがないね。

ママさんはいまでも元気、松本の中町で「無伴奏」という名の版画の画廊をやっています。この前、松本を訪れた際に久しぶりにお会いしてきました。

あの頃のことは本当に鮮明に覚えている、全て初めて、全てに敏感な時代だった。いまだに僕にとってチーズケーキといえば「無伴奏のチーズケーキ」、だから他ではあまり食べないのです

あの頃のみんな今は何してるんだろう。元気でいるかな。