舞の海の話はスポーツ人としておかしい

元小結の舞の海秀平さんが8日、講演で八百長問題について触れ、「お金のやり取りは問題だが、人情相撲というか武士の情け、というような部分が角界には昔からあった。真剣勝負だけれど時には情けが絡むあいまいな部分があってもいいのではないかと思う」と述べたといいます。

オリンピックやワールドベースボールクラッシックなどにも帯同し、「結果がすべて」の厳しいスポーツの世界を目の当たりにしてきた私としては、たいへん違和感があります。

私は、大相撲はれっきとしたスポーツであると思っています。もちろん伝統文化や神事の側面もあるけれど、根本はルールが決められた、正々堂々と戦うスポーツです。スポーツでないというのなら、ビデオ判定なんかする必要もありません。

もちろん、スポーツで「武士の情け」的なものが絡むことはあるでしょう。たとえば、野球の国際大会では大量点差がついた場合、盗塁はしない、という暗黙のルールがあります。

だいぶ古い話だけれど、高校野球で星稜高校の強打者松井秀喜(現在はアスレチックス)が5打席連続敬遠された時も、高校生らしくないとか、いろいろな意見がありました。ルールを守ってやっているわけだから問題はないのだけれど、これだって、スポーツの「情」的な部分が議論になtったわけです。

しかし、舞の海が言う、「ここでこの力士が負け越したらと思うと、そいつの家族の顔なんかも頭に浮かんで、力を出せないことがあった」というのは、ちょっとおかしいよ。だって、そのおかげで上に上がれない力士もいるわけだし、その不幸な家族の顔は頭に浮かばないのでしょうか?

それは、ただその上に上がれないかもしれない力士や、力士の家族を知らないというだけの話なのです。

プロ野球選手たちはその点大変しっかりしています。仲良くなりすぎると、情が移ることがわかっているからです。

だから、シーズンオフの自主トレなどでは他チームの選手と一緒にやることはあっても、シーズン中は友人であっても対戦相手となるチームの選手とはなるべく一緒にいないようにしています。

人情相撲を認めないわけではないけれども、少なくともそれを正々堂々と語ってはいけないのです。

大相撲にはまだまだ意識改革が必要です。