将来の日本のための年金改革

 1日、衆議院本会議で年金制度の持続可能性を高め、将来の年金水準を確保するための年金制度改革法案の趣旨説明が行われました。また翌2日、厚生労働委員会で塩崎恭久厚生労働大臣から提案理由説明が行われ、審議入りしました。

 具体的には、短時間労働者への保険適用の拡大や、国民年金に加入している女性の産前産後4か月間の保険料免除、年金額の改定ルールの見直し等が盛り込まれています。

 日本の公的年金制度は、現役世代が負担する保険料や税金により、給付の9割を賄っています。少子高齢化が進み、人口が減少する中で制度を将来にわたって安定させるには、負担と給付のバランスが大きく崩れないよう調整することが不可欠です。

 2004年の制度改革では、現役世代の負担が過重にならないよう保険料に上限を設定。またその負担の範囲内でやりくりができるよう給付を適切に調整配分する仕組みも導入しました。この仕組みが「マクロ経済スライド」です。

 仕組みは用意したものの、このマクロ経済スライドは過去に1度しか発動されていません。というのは、現在の制度では、賃金や物価の伸びが低かったりマイナスだったりすると発動できないからです。

 また現役世代の賃金が下がった時に、年金も同様に下げるルールが徹底されていなかったため、給付の調整が進まず、将来世代の給付水準が低下しているのが現状です。

 今後もこうした傾向が続くと、将来世代の給付水準がさらに低下していくことになり、持続可能な制度維持が困難になります。

 こうした事態を避けるため、今回の年金制度改革法案では、

 ①物価が上昇しても現役世代の賃金が下がれば、賃金の下落に合わせて年金給付額を調整する仕組みの導入。

 ②マクロ経済スライドを強化し、給付額の伸びを物価や賃金の上昇分より低く調整する。

ということが盛り込まれました。

 これにより、年金給付額を調整し、現役世代が将来受け取る年金額の水準確保を目指します。

 この法案に対して、野党の一部からは「年金カット法案」や「年金は事実上破綻している」といった批判もあります。しかし、そもそも賃金と物価が上がる状況では、年金額が下がることはありません。また低年金・低所得の方への配慮として、福祉的な給付を始めた後に、この見直しは実施されます。

 積立金についても現在130兆円の水準を維持しており、年金制度自体が破綻しているということは全くありません。

 年金は現役世代の「仕送り」に支えられている仕組みです。したがって現役世代の賃金が下がれば年金も下がるのは当たり前で、賃金が下がっているのに年金給付額がそのまま維持される、というのはおかしな話です。限られた財源を現在の高齢者と未来の高齢者の間で公平に分かち合うことで、将来世代の年金も確保しなければいけません。

 今回の年金制度改革法案は、そんな当たり前のことを実現し、持続可能な社会保障制度を維持するための法案です。それはとりもなおさず、お年寄りも若者も、誰もが健康に、安心して暮らすことのできる社会を創るためには、必要不可欠なものです。

 将来の日本のために、年金制度の改革は避けては通れません。厚生労働委員会で、しっかりと議論していきたいと思います。