ベネズエラ美人と国策としてのスポーツ

2010年7月「e-resident」掲載ベネズエラ、カラカス・「女子ソフトボールの世界選手権」

女子ソフトボールの世界選手権がベネズエラの首都・カラカスで開催されました。4年ごと、オリンピックの2年前に開催されるこの世界選手権が前回まではオリンピック予選を兼ねていました。

これまで日本チームは毎回オリンピックの出場権を獲得していたものの、いつも決勝で米国に敗れて世界一になれないでいました。しかし、2年前の北京オリンピックで見事、宿敵米国を破って世界チャンピオンになりました。その後、ご存じのようにソフトボールがオリンピック競技から外れることが正式決定したため、この選手権がソフトボールの世界一を決める唯一の大会となりました。

日本中が感動した北京オリンピックの金メダルでしたが、もう随分と昔の話になってしまった気がします。

今回の世界選手権のことも日本ではほとんど報道されておらず、このコラムで初めて知った読者の方も多いでしょう。そんな中、「バック・ソフトボール」を合言葉に再びオリンピック競技種目に戻ることを目指して、そして再び世界一になることを目指して、選手もスタッフも頑張っています。

今回の世界選手権に挑む日本チームの監督は北京オリンピックで指揮を執った斎藤春香監督、選手団の団長はシドニーおよびアテネオリンピックで指揮を執った宇津木妙子さんです。

カラカスに着いた日の夜、さっそく宇津木団長から「明日の朝6時にエレベーター前に集合」との命令が下りました。選手たちにではなく、わたしに対してです。

翌朝から、宇津木団長と2人きりでの早朝トレーニングが始まりました。選手が宿泊するホテルの地下にあるジムで2人並んで毎朝1時間トレッドミル(ランニングマシーン)をこぎながら、いろいろな話をするのです。

この2人きりのトレーニングは、アテネオリンピックの時も毎日のように行いました。シドニーで惜しくも銀メダルに終わり、「今度こそ金メダル」と臨んだアテネオリンピックでしたが、思うような結果がついてこなくて、一緒に並んでトレッドミルをこぎながら、宇津木さんの愚痴をよく聞きました。オリンピックの監督は孤独です。結果だけですべてを判断される厳しい世界です。愚痴の1つでもこぼしたくなるでしょうが、選手やマスコミの前ではそんなことは言えません。

ドクターとしてアテネオリンピックでわたしが最も時間を割いたのが、宇津木監督の話を聞くことでした。北京オリンピックで優勝が決まった瞬間、あのテレビ解説での絶叫には、今までのさまざまな思いが込められていたに違いありません。

今回もいろいろな話をしました。

「サッカーW杯での日本代表チームの活躍は、スポーツの素晴らしさを皆に実感してもらえて、日本のスポーツ界にとってはすごく良いことだよな」

「子どもたちにソフトボールを教えていると、やはり教育が国の基本だと実感するな」

「今回の大会はベネズエラ政府の力の入れ具合がすごいな。日本でもこういうことができればなあ」

すべての話に共感しました。

―ベネズエラ全体で盛り上がる

今回の世界選手権ではベネズエラ政府が国策としていかにスポーツ振興に力を入れているのかが実感できました。真夜中に到着した日本チームを歌と踊りで歓迎するとともに、スポーツ・観光大臣が自ら出迎えてくれました。開会式ではチャベス大統領が来て演説しました。

本来米国で開催される予定だったこの世界選手権ですが、半年前に米国が辞退したことで急遽ベネズエラでの開催が決まり、わずか半年で新しいソフトボール競技場を2つ完成させました。大会期間中は大会運営に多くの人がかかわりました。試合会場に移動する際には「JAPON」と書かれた日本選手団専用バスが用意され、沿道では多くの兵士たちがバスを警護してくれました。チケットはすべて無料で配布されたこともあり、会場はいつでもベネズエラの人たちで超満員、テレビではすべての試合を生中継しています。この大会運営に30億円投じたそうです。

政治の仕組みに違いはあるにせよ、とても日本ではできないことだろうなと、うらやましく感じました。

―美女の育成も国策

ところで、「ベネズエラ美人」という言葉をご存じでしょうか。ベネズエラでは、テレビに出ている女性は美女ばかりで、世界的なミスコンでも多数の優勝者を出しています。街ゆく人も肉感的な美人が多い。聞くところによると、これも国策だそうです。観光立国を目指すベネズエラは美人の育成にも力を入れており、国立のエステやモデル学校を設立し、世界コンテストに出る場合には、国がお金を出して候補を育てるとのこと。

これは国策としてはどうかなと思ってしまうけれど、国の政策というのは大きな展望やビジョンを持たずには成しえないのだということはよく分かりました。

さて、今回の日本チームです。予選リーグを7戦全勝とグループトップ通過した日本はプレイオフでまず、地元ベネズエラと対戦し、超アウェーの中、2対0で勝ちました。

決勝戦の相手は、北京オリンピックと同じ米国でした。残念ながら7対0で敗れ、オリンピックに続く金メダルはなりませんでした。それでも選手たちはよく頑張りました。これからも「バック・ソフトボール」を合言葉にオリンピックへの復活を目指していきます。時々は気に掛けてくださいね。

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