スポーツとコミュニケーション

2007年10月「e-resident」掲載~アゼルバイジャン・レスリング世界選手権

―ワッハッハ

8月から約2ヶ月間、バンコクのユニバーシアード、ドイツの体操世界選手権、アゼルバイジャンのレスリング世界選手権、と連荘で続いた海外帯同がようやくひと段落。

体操の世界選手権では女子団体が無事にオリンピックの権利を獲得しました。男子団体は惜しくも銀メダルでしたが、個人戦では補欠だった水鳥選手が大活躍。ドイツから帰国後2日後にレスリングの世界選手権が開催されたアゼルバイジャン・バクーに出発、世界最強軍団女子は7階級のうち4階級で金メダルを獲得し、相変わらずの強さを世界に見せつけました。万全とはいえない体調でもしっかり勝つ、さすがでした。

アゼルバイジャンはカスピ海西岸にあり旧ソビエトですがイスラム圏です。オイルマネーで潤っているためか、町の中はあちこちで新しいビルが建設されていました。3月にやはりレスリングで訪れたシベリア・クラツノヤルツクとは雰囲気が全く異なり、「ソビエトは本当にいろいろな国、人種の集まりだったんだなあ」と実感できます。

 

今回、女子の団長として参加されたアニマル浜口さんともたくさん話をしました。例の「気合だー」や「ワッハッハッハッハ」もその「こころ」をうかがい、単なるカメラの前だけのパフォーマンスではないことがよくわかりました。最終日、「またまた疑惑の判定」で浜口京子選手が敗れた最終日、選手のドーピング検査の付き添いを終えてウォーミングアップ会場に戻ると、選手数人と一緒にアニマル浜口さんも待っていてくれました。

 

「先生、今回もいろいろ世話になったお礼に、今日は例の笑い方をお教えしましょう。ワッハッハ」たまたま近くにいたアゼルバイジャンの少年二人と一緒に並べさせられて、その前にはアニマル浜口先生、少年たちと大きな声で、「ワッハッハッハッハ、ワーッハッハッハッハ」と笑っているうちにだんだん爽快な気分になってきて、調子に乗って続けていたら、たくさんの人が集まってきてみんなで大笑い。アゼルバイジャンとの国際親善に貢献です。

スポーツ選手は、言葉は通じなくても、このように外国選手たちとコミュニケーションをとることが得意です。そこには、「挨拶」「相手の顔や目を見る」「スキンシップ」といった、まあ考えれば当たり前のコミュニケーションのポイントがあるように思います。

―スキンシップが大切

スポーツにかかわる人たちは、よく握手をし、肩を抱き、ハイタッチをします。特にレスリングの人たちは身体を触るコミュニケーションが好きです。今回の世界選手権でも選手村となったアブシャロンホテルのエレベーターの中で、見知らぬ外国の選手やコーチから何度も握手をされ、肩をもまれました。ロサンゼルスオリンピックの金メダリスト、現在は日本レスリング総監督の富山英明さんも私と話すときは必ず私の腕や肩を触っています。

確かに、赤ちゃんとのコミュニケーションもまったく同じですよね。言葉は通じなくても、笑いかけたり、表情を察したり、肌をふれあって、ちゃんと意思の疎通ができます。そんなことを考えていたら、電子メールのことを思い出しました。私は基本的には電子メールが嫌いです。特に、考えながら返事を書かなければいけないメールはとても苦手。

もちろん、外国にいることが多い私にとっても、通信手段としての電子メールはとても便利です。でも、メール文化により、人どうしのコミュニケーション能力が失われつつあるような気がしてなりません。

廊下であったとき「先生、メールしておきましたから」って言われて、「なんで今ここで話せないの?」って感じたことありませんか?

単なる事務連絡ならともかく、メールで「思い」を」正確に伝えるのは不可能です。相手の表情が見えない、目が見えない、聞き返せない、おまけに身体にも触れることが出来ない。だから、電子メールがあまり好きになれないのです。というわけで、職場内では、「事務的な連絡以外はなるべく電話か直接会って話すように」というルールを作っています。

まあ、今回は話がどんどん脱線してしまいました。スポーツというのはルールがあってみんなで高めあう世界共通の文化ですから、人と人とのコミュニケーションを含めて、いろいろなことが学べるなあ、という結論にしちゃいます。

この2ヶ月間、とてもハードで少々疲れたけれど、やっぱり今回もいろいろな事があって楽しかったなあ。