女子レスリングワールドカップ

2007年4月「e-resident」掲載~ロシア、クラスノヤルツク・女子レスリングのワールドカップ

―女子レスリング王国日本

3月18日から25日まで、ロシアのシベリア地方、クラスノヤルツクで開催された女子レスリングのワールドカップに帯同してきました。

レスリングのワールドカップは、世界のトップチームによる団体戦。全階級(7階級)にわたる総合的な実力を競う大会で、世界選手権と並ぶビッグ大会。日本の女子は過去6回の大会のうち5回優勝していますが、今回は北京オリンピックでも金メダルが期待される吉田沙保里選手ら世界チャンピオンではなく、若手選手中心で臨みました。北京オリンピックの後も見据えた、「女子レスリング王国日本」を確固たる物にするための作戦です。

今回出場した7人の選手たちは、それぞれジュニアの世界チャンピオンや今年の1月におこなわれた天皇杯の全日本チャンピオンですが、吉田や伊調、浜口といった「とても強いお姉さんたち」がいるので、なかなか日の目を浴びません。しかし、今回、シニアの世界大会という数少ない与えられたチャンスで結果を出そうと一生懸命。試合に勝って大喜びする姿や、実力を発揮できずに悔し涙を流す姿を目の前で見ながら、「これからもしっかりサポートしてやらなきゃ」と強く感じたのでした。

シベリア・クラスノヤルスクは思っていたほどは寒くありませんでした。夜中に凍りついた道路の雪は、日中は解けて泥のようになっていましたから、おそらく日中の気温は0度を越えていたと思います。また、市内には水道管と同じように、暖房用の熱湯が各家庭や施設に供給されているそうで、屋内や体育館はとても暖かでした。かつて、この地を訪れたことのあるコーチによれば、「昔に比べたらだいぶきれいな近代化された町になった」とのことでした。

試合の結果は、初日の予選リーグで、ベラルーシ、ドイツをそれぞれ6対1で撃破し、翌日の決勝に進出しました。決勝の相手は、オリンピックチャンピオンを含むベストメンバーで臨んだ中国、残念ながら、1対6で敗れて銀メダルでした。詳しくは、日本レスリング協会のホームページ(http://www.japan-wrestling.jp/)を見ていただけたらと思います。

―初めてのレスリングシューズ

今回の大会、私ははじめてレスリングシューズを用意していただきました。もちろん、レスリングの経験もない私ですから選手たちとスパーリングもできませんが、レスリングシューズをはいて練習マットの上に立ち、「壁になる」という仕事をしました。試合前の練習会場は狭いので、ひとつのマットの上で何組もがスパーリングしなければいけません。選手たちは必死ですから、隣でスパーリングしている選手が目に入らないときもあります。ぶつかったり、交錯して怪我でもしたら大変。そのために、選手たちの間にはいるのです。木名瀬監督に、「先生、間に立っていてくれ」といわれて、そうしましたが、同じマットの上に立っているだけで、「一緒に戦っている」という一体感を感じる事ができます。特に今回は団体戦ですから、もちろん、監督の命令もその点を意識してのこと。

決勝戦のあとドーピング検査に立会い、そのあとホテルでバンケットがありました。今回の大会、ボランティアで日本チームの面倒を見てくれたオーリャーさんとイリアさんというロシア美女二人にウォッカの一気飲みを強要され、「これも国際親善」と調子に乗ったのが運のつき、私は泥酔状態でバタンキュー。翌朝は4時15分集合で帰国の途に着くことになっていたのですが、気がつくと時計は4時。大慌てでメディカルバックと自分のスーツケースに荷物を詰め込みロビーに向かいました。

空港までのバスの中、何か気分がわるいので脈を取ってみたら、二段脈、三段脈の連発で、たぶん心室性期外収縮だろうなとは思いながらも、ちょっと心配でバスの中ではずーっと脈を取っていました。やはり、不整脈というのはあまり気持ちがいいものではありませんなあ。選手たちに、「やっぱりドクターが一番手がかかる」などといわれては大変、と具合が悪いのをひた隠しにしながら、無事日本に到着したのでした。

 

※レスリングシューズをはいてマットの中央でこちらを向いて立っているのが私です。