東京で開催された世界体操が幕を閉じました。
男女とも来年のオリンピック出場権を獲得し、男子はたくさんのメダルをとりました。
何より、個人総合で世界選手権三連覇を達成した内村航平選手の凄さを日本中の人が感じました。
近くにいた私も、個人総合の最終種目鉄棒の着地を決めたときは鳥肌が立ちました。
その瞬間、航平は体から何かを発していました。
会場で見ている皆がそれを感じました。
さらに、私が本当にすごいと思ったのは、今大会で常に感じた美しい体操を求めて努力する内村航平の姿でした。
「エレガンス賞を受賞したことが一番うれしい」
内村選手は三連覇を成し遂げた後のインタビューで答えました。
エレガンス賞は個人総合に参加した選手の中で「最も美しい体操」をした選手に送られる賞です。
美しい体操を求めて努力する内村選手にとって、個人総合三連覇よりうれしかったというのはたぶん本当なのだろうと思います。
そして、昨日の最終日、種目別決勝鉄棒の最終演技者だった内村選手、美しい完ぺきな演技で大会を締めくくりました。
あんなにきれいな鉄棒の演技だったのに、結果は残念ながら銅メダル。現在の採点方法では美しい体操よりも難度の高い技をたくさんやったほうが有利なのです。
もちろん悔しい部分もあるのだろうけれど、「この銅メダルはとてもうれしい」と素直に記者たちの質問に答え、ウォームアップ会場に戻ってきた航平は、
「これが有終の美を飾るってやつですかね」とうれしそうな顔で私に言いました。
そうか、航平はメダルの色ではなく、自分が求めてきた美しい体操で最後を飾ることができたことが本当にうれしいと素直に思っている。
常に結果が求められるスポーツの世界で、結果より美しい体操にこだわる。
人がどう評価するかよりも、自分が納得いく演技ができたかどうかにこだわる。
これらはなかなかできないこと。そこが本当の航平の凄さだと感じました。
今回の世界体操、満足のゆく演技ができた選手、そうでなかった選手、それぞれでしょう。
みんなそれぞれの思いを胸に、ロンドンオリンピックに向けて「強くて美しい体操」を目指してさらに頑張ってほしい、と思います。
応援するからね。