Archive for 6月 19th, 2012

もうすぐ北京オリンピック

火曜日, 6月 19th, 2012

2008年8月「e-resident」掲載~カナダバンクーバー、サレー・「女子ソフトボールカナダカップ」

―北京オリンピックまであとわずか

本当に4年間はあっという間です。

7月は、女子ソフトボールに帯同して、カナダに行ってきました。バンクーバーの近くのサレーで開催された「カナダカップ」に、オリンピック前の最終調整を兼ねて全日本チームが参加しました。この大会は毎年開催されるのですが、世界中からナショナルチームやクラブチームが出場します。今回は、オーストラリア、カナダ、チェコなどのナショナルチームが来ていました。

選手たちはみな体調もよく、爽やかな気候の中で、のびのびとプレーしていました。アテネオリンピックでは、オーストラリアに二回敗れ、惜しくも銅メダルでしたが、今大会では、そのアーストラリアを二回とも退け、見事優勝を飾りました。

 

残念ながらロンドンではオリンピック競技から外されてしまったソフトボールですが、今回北京では斉藤春香監督が指揮をとります。

斉藤監督は、アトランタ、シドニー、アテネと3回のオリンピックに選手として出場しました。アトランタオリンピックではホームラン王にも輝いています。青森県の出身ですが、いかにも東北人らしい、まじめで、黙々と仕事をするタイプです。

もう長い付き合いになりますが、特に思い出深いのは、シドニーオリンピックの時、ベンチ前で二人並んでひたすら大きな声を出しまくったこと、いわゆる、「声作戦」の思い出です。

「コマッチャン、あんた何のためにベンチに入るか解ってるんでしょうね」

シドニーオリンピックで宇津木監督にいわれました。「ベンチに入るからには、チームの一員として、何でもやりなさいよ。声もしっかり出しなさいよ。」というわけです。命令どおり、ベンチから大きな声を出していると、宇津木監督は、今度は選手たちに言います。

「お前らー、小松先生より声が小さいじゃあねえかー」

つまり、初めからそれを狙っているわけです。さすが宇津木監督です。

―声出し作戦

ソフトボールの場合、そもそも登録できる選手が少なく、守備についているときはベンチには数人しか残らないことになります。斉藤監督は指名打者なので守備につきません。ですから、「先生、そろそろ「声作戦」行きますよ」との合図で、いつも並んで声を出していました。

とくに、予選でアメリカを破った試合のことはよく覚えています、毎回ピンチの連続でしたが、耐えて耐えて、ついに公式戦対アメリカ初勝利を手にしました。

ソフトボールの場合、球場が狭いので、ベンチの声が打者によく聞こえます。「ガンバレー」「大丈夫だぞー」とひたすら大きな声を出し続けることによって、打者の集中力をかき乱すのです。斉藤監督の話によれば、その後の世界大会でアメリカがまったく同じことをやってきたそうです。アメリカの選手と話をしてみると、「シドニーであれをやられて本当に嫌だった」とのこと、「声作戦」はそれなりの効果があったようです。そう考えると、自分も少しはメダル獲得に貢献できたのかなあ、とうれしくなったりもします。

今回の遠征で一番感じたことは、「斉藤監督の存在感」でした。もともと優しい性格の監督が、時には厳しく叱り、時にはしゃべりかけづらい雰囲気も醸し出し、それでいて、普段通りの優しさも感じる。頃合いの良い存在感、距離感がとてもうまくチームをまとめているように思いました。

今度こそ、宿敵アメリカを破って、金メダルを手に帰ってきてくれるような気がします。

さて、そのカナダカップが開催されたサレーですが、「ソフトボールシティ」ともよばれ、みんなソフトボールが大好きで、親しんでいます。地元のカナダチームが残れなかった決勝戦でも、あふれんばかりの観客が集まり、勝ち負けに関係なく素晴らしいプレーに拍手を送ります。ボランティアの方や、ホストファミリーの人たちもとても優しくしてくれました。会場には、4面のソフトボール場があり、国際大会と並行して、障害者のソフトボール大会も行われていましたが、本当に「みんながソフトボールを楽しんでいる」という雰囲気でした。いつも、「スポーツに親しむためのしくみ作り」が大事だ、と叫んでいる私にとっても、大変参考になる大会でした。

先日は、北京オリンピックの日本選手団結団式が行われ、いよいよ本番モードです。わたしは、今回は星野ジャパンのチームドクターとして、日本での合宿から大会期期間すべて帯同する予定です。みんなが、最高のコンディションで試合に臨み、力を発揮できるように、力を尽くしてきたいと思います。

スポーツと腹痛

火曜日, 6月 19th, 2012

2008年7月「e-resident」掲載~NHK「解体新ショー

―解体新ショーに出演

先日、NHKの「解体新ショー」の収録に行ってきました。解体新ショーは、カラダの数々の謎を科学的に解き明かす番組です。出演するお笑い芸人の方たちのトークや演技も楽しく、いつも「なるほど、そーなんだ」と感心しながら見ていましたが、今回は私がお手伝いすることになりました。

私に与えられたテーマは、「走るとどうしておなかが痛くなるの?」です。

おそらく誰もが経験のある、走るとおこる脇腹の痛み、これを「side stitch」といいますが、この原因に関しては諸説があるもののよくわかってはいませんでした。運動に伴う腸管の虚血、胃内容物の排泄遅延、腸管がぶつかり合うことによる機械的な刺激、呼吸筋の血流や酸素供給不足、腹腔内圧の上昇、腸管内ガスの結腸彎曲部への移動、胆道内圧の上昇などが原因と推測されていますが、おそらくそれら複数の因子がかかわりあっているのだろうと思われます。疫学的には、「運動を休むと消失する」「同じ運動でもランニングに多く、自転車や水泳などでは少ない」「子供のころにはよく起きるが、大人になるとなくなる」などの事実が明らかになっています。

今回の「解体新ショー」では、いくつかの実験を行い、その原因の一つが明らかになりました。 滋賀医科大学の谷徹教授が開放式MRIを用いて、走ることにより結腸の脾湾曲部や肝湾曲部に大量のガスがたまることをリアルタイムに確認してくださったのです。私も、ランニングで小腸や大腸が大きく揺さぶられることを確かめました。運動時には腸の蠕動運動が抑制されますから、揺さぶられることとあいまって、結腸内に分散していたガスが湾曲部に集まることが推測できます。それが痛みの原因というわけです。  確かにそう考えると、「運動を休むと消失する」(蠕動運動の再開によってガスが分散)「同じ運動でもランニングに多く、自転車や水泳などでは少ない」(腸が揺さぶられることと関係する)「子供のころにはよく起きるが、大人になるとなくなる」(自律神経機能の未発達な子供で起こりやすい)、という疫学的事実の理由も説明できます。番組でも、ペナルティのお二人が模型を使って上手にそこのところを説明してくれました。打ち合わせでちょっと話を聞いただけで、すぐにポイントをつかんで表現しちゃうんだからスゴイ。さすがプロ、と思いました。僕にはそこらへんの修行がまだ必要だなぁ。

―運動時に起こる腹痛

これはトップアスリートでもしばしば起こり、いろいろな相談をうけることがあります。今までの運動時の消化器症状を検討した報告では、胸やけ・吐き気・嘔吐などの上部消化管症状が10~30%程度、下痢・排便衝動・下血などの下部消化器症状が10~40%程度見られるとされています。時々、マラソンレース中にコースを外れて民家でトイレを済ませてからコースに戻って、それでも優勝しちゃったりする選手がいますが、これもまさしくマラソン時に起こる腹部症状です。  このような腹部症状で悩む選手たちは、各々が独自な工夫をしています。食事の内容や食べる時間など、それぞれの選手の消化機能や運動の質が違うので、一概に指導はできません。いろいろ試しながら克服しているといったところでしょうか。時には、整腸剤や制酸剤、抗コリン剤の力を借りることもあります。 「走るとどうしておなかが痛くなるか」なんて、運動やめればよくなっちゃうわけだし、命にかかわるわけでもないし、医学的には大した問題じゃあないのかもしれないけれど、スポーツを普及させるには大事なテーマかもしれません。走るたびにおなかが痛くなってしまえば、みんな走ることをやめてしまいます。今回はきちんとした研究プロトコールも存在しない実験だったけれど、きちんとした研究を行う価値はあるかもしれないなあ、と感じました。  これだけ「健康スポーツ」が叫ばれて、国民の運動不足が指摘されているわけだから、「どうしたらみんながスポーツを好きになるのか、体を動かすことが億劫じゃあなくなるのか」というテーマはきっと大事ですね。  まだまだやらなければいけないテーマがたくさんあります。  それにしても、共演した国分太一さん、劇団ひとりさん、ペナルティーのお二人、それから久保田祐佳アナ、みんな爽やかで、礼儀正しくて、素敵な人たちだったなあ


「人間ドック」を経験

火曜日, 6月 19th, 2012

2008年6月「e-resident」掲載~人間ドック」を経験

―覆面調査?

今日、生まれて初めて「人間ドック」を経験してきました。

大学の助手になったのが11年前、それ以降はずーっと正式な職員だったのですから、法律的には定期的な健康診断を受けなければいけなかったはずですが、大学病院時代はほとんど健康診断を受けたことがありませんでした。3年前、現在の勤務地である国立スポーツ科学センターに移ってからは、「必ず健康診断を受けなさい」というお達しがあり、今年は、「健康診断の代わりに人間ドックを受診した場合でも、職場から2万円近い補助が出る」、ということを初めて知り、「それじゃあどんなものか一度受けてみよう」と人間ドックの申し込みをしたのでした。

ちょうど先週、札幌で日本整形外科学会が開催され、そのシンポジウムで「トップアスリートに対する内科的メディカルチェック」と題して、「競技力を向上させるための魅力的なメディカルチェック、攻めのメディカルチェック」という話をしてきたばかりでした。ですから、人間ドックがどれくらい魅力的に行われるのか、そうじゃあないのか、ちょっと偵察してみよう、とも思いました。医者であることを隠して、ミシュランと同じ、いわゆる「覆面捜査」です。

駅から徒歩10分で到着したそこは、7階建てのビル全体が健診センターになっていました。10時からの予約だったのですが、15分前に到着し、受付でオプションの血液検査と胸部のCT検査を予約しました。ロッカールームで検査着に着替えた後、とても奇麗な、ホテルのような待合室でしばらく待っていると名前を呼ばれ、まず初めに血液検査、そして身長体重測定、体脂肪測定、心電図、呼吸機能検査と続きます。

待合室で待つ人たちも、平均年齢は45歳といったところでしょうか、病院とはまったく雰囲気が違います。

次に呼ばれたのが腹部超音波検査、私が行うような「三こすり半エコー」とは違い、じっくり時間をかけてやってくれました。ただ、あまり時間がかかるので、「何か悪いところでもあるのかなあ」とちょっと不安な気持ちにもなります。終了後に技師さんに、「何か問題ありますか?」と聞いたところ、「結果は後でドクターから説明があります」と当たり前の答え。「心配なものはないと思いますが詳しくはドクターに聞いてくださいね」くらいに言ってもらえれば、あまり不安にならないのになあ。まあ、患者さんの気持ちがよくわかります。

その次はドクターによる診察、あらかじめ記入した問診表を見ながら、先生が問診します。高脂血症のための継続的な運動療法を行っていますか?の問いに、「ハイ」と記入しておいたのですが、「3年前の健康診断で中性脂肪が高かったものですから、定期的に運動を行っています」と言うと、「それは医師の指示で運動療法を行っていますか。という意味なんですよねえ」といいながら、「ハイ」を消されてしまいました。うーん、おれの指示でやっているわけだから、医者の指示ということにならないのか?まあいいか。

最後に、噂のメタボ診察です。「そこに立っておなかを出してください」といわれ、巻き尺で腹囲を測ります。先生は、「85センチ」といったん言ったあと、「84.6センチですね」と言いなおしました。ご存じのとおり85センチ以上あるかないかがメタボリックシンドロームの運命の分かれ道。85センチ以上だといろいろ説明しなきゃいけないからめんどうくさいと思ったのか、それとも私にメタボの烙印を押すのが申し訳ないと思ったのか、そこら辺は定かではありませんが、何とか私はメタボリックシンドロームからまぬがれたのでした

その後は、聴力検査、視力検査、眼底検査と続き、レントゲン室に移動して胸部CT検査と上部消化管検査(バリウム検査)を行いました。げっぷを我慢しながら頭が上がったり下がったり、ぐるぐる回されて、「これなら僕がやる内視鏡検査の方がよっぽど楽だな」と感じましたが、「バリウム検査に命をかけてる」といった感じの技師さんで、とても一生懸命やってくれました。

これですべて終了です。時計を見るとまだ11時20分、なんと1時間20分ですべての検査が終わってしまいました。1日がかりだと思っていたのでびっくり。食事を済ませて12時30分から結果説明がありました。一部の血液検査と胸部CT以外は、すべて結果がもう出ていて、これもまたびっくり。腹囲はちゃんと84.6センチと記載され、メタボリックシンドロームは非該当となってました。腹囲をおまけしてくれた先生は言いました。

「大きな問題はなさそうですねえ。ただ、肝臓に血管腫がありました。まあこれは血の塊みたいなもんですから心配ありません(ふーん、そう説明するのか)。念のため6ヶ月後に再検査してくださいね。それでは今日はお疲れ様でした」

着替えを済ませて、料金を払いました。そういえば、係りの人は私のことを「お客様」と呼んでたなあ。たしかに、患者ではないからなあ。でも、何となく違和感もある。まあいいか。

―覆面調査報告

「覆面捜査」の結果わかったのは、病気ではないと思っている人間にとっては、病気を発見してもらうことよりも、短時間で、不快感なく終了することが、「魅力ある人間ドック」なのだと感じた事でした。バリウム検査だって、見落としなくダブルチェックしていたら2時間で結果まで出るわけがないとも思うけれど、「異常なくてよかった」と思いたい人間にとってはそんなこと許せるような気もする。

まあいずれにせよ、「大した問題はなさそうですねえ」と言われ、なんだかとてもいい気分になって、帰り道、通りすがりのとんかつ屋で「カツカレーの大盛り」を注文してしまったのでした。

間違いなく腹囲が2センチ増えた私は、それでも、来年の健診までには腹囲が85センチ以内になるよう努力しようとも思ったのですから、85センチという数字も数値目標としては悪くはないなあ、と感じたのでした。