日別アーカイブ: 2011年6月2日

スポーツ貧血と立ちくらみ

毎日スポーツ選手のメディカルチェックが続きます。

スポーツ選手は激しいトレーニングによって血液のもととなる「鉄分」が失われやすいため、貧血になりやすくこれを「スポーツ貧血」と呼ぶこともあります。

貧血は医学的には「血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態」のことですが、それにより赤血球の酸素運搬能力が低下するため、パフォーマンスとくに持久的能力に直接影響します。ですから、スポーツ選手は症状のあるなしにかかわらず定期的に血液検査でチェックしなければいけません。症状が出る前に貧血がないか、鉄欠乏状態がないかなど、ヘモグロビン、血清鉄、フェリチンなどの値を調べるのです。

今までに貧血と診断されたことのある選手は再び貧血になることが多いので、問診では必ず「今まで貧血と診断されたことがありますか」と聞きます。

そこでよくある答えが、「立ちくらみがよくおきて貧血じゃないかと言われました」という答え。

小学校の朝礼などで子供たちがよく倒れることがありますが、それを「脳貧血」と呼ぶことがあるので混同されがちですが、立ちくらみと貧血は医学的には違います。

貧血はヘモグロビン濃度が下がり血液が薄くなること、立ちくらみは自律神経が不安定になり頭の血圧を維持できなくなること、すなわち「自律神経発作」です。

人間は寝ている状態から急に起き上がると、重力によって頭の血圧が低下するはずですが、自律神経の働き(交感神経と副交感神経)によってそうならないような仕組みを持っています。

それがうまくいかなくなったのが立ちくらみ、子供は自律神経が不安定なのでそのような症状がよくおこります。「車に酔いやすい」、「遠足の前におなかが痛くなる」、「お風呂ですぐのぼせる」など誰もが経験のある症状もその仕組みは同じです。心臓や血圧だけでなく腸の動きも自律神経が深くかかわっているからです。

そんな症状は大人でも時々おきますが、日々ストレスにさらされているトップアスリートでもよく起ります。

「試合の前になると心臓がドキドキする」、「立ちくらみが頻繁に起こる」、「試合前におなかが痛くなったり、すぐに下痢をする」、「ぐっすり眠れない」などなど、心配になればなるほどそれらの自律神経症状は悪くなります。

こんなときに一番大事なことは、何が体の中で起きているのかを理解すること、それだけで、不安がなくなって症状が軽くなります。「オリンピックのメダリストだってこんな症状になることあるんだよ」って聞いて、安心してよくなる選手も多いのです。