日別アーカイブ: 2011年5月15日

最先端の治療=よい治療、ではない

今日は日本消化器病学会に参加してきました。

震災のため、この春多くの学術集会が延期されましたから久しぶりの学会参加です。

医学の学術集会は最新の知見を発表したり議論するのと同時に、卒後教育のためのプログラムも用意されています。

医学の進歩は早いですから、常に新しい知見や新しいスタンダードを仕入れていなければいけません。

私も卒後教育プログラムPostgraduate courseで勉強してきました。

しかし、今日の学会で一番印象深かったのは、ランチョンセミナーでの和歌山県立医科大学准教授の加藤順先生のお話でした。

「その症例、本当に生物製剤でいいですか?」と題した講演、生物製剤とはクローン病などの治療に使う抗TNFα抗体などの新薬のことです。

つまり、クローン病に対する治療の進歩、新薬開発の素晴らしさは認めつつも、栄養療法や副腎皮質ステロイドなど昔からの治療法も大事だよというお話でした。

世の中は「最先端の治療」が「よい治療」と勘違いしがちですが決してそうではありません。

最先端の治療がよい治療かどうかがわかるには時間もかかるのです。

実はこの加藤順先生、野球部だった学生時代からよく知っている東大の医局の後輩。

とてもわかりやすくて、ジュンちゃんらしさが醸し出ていて素晴らしい講演でした。白い巨塔の世界でちょっと挑戦的なこと堂々としゃべるには、それを裏打ちするしっかりとした知識と経験だけでなく、自信や勇気も必要です。

加藤先生の研修医時代のふてぶてしい姿を思い出しながら、「やっぱり大物になったな」とうれしく感じて学会の会場を後にしたのでした。